城山に「山城」があったから、植物多様性が守られた?
山城「城山」をテーマとした連載。第5弾となる今回は、城山の豊かな「植物」にスポットを当てます。
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山城「城山」をテーマとした連載。第5弾となる今回は、城山の豊かな「植物」にスポットを当てます。
植物生態学が専門の鹿児島大学名誉教授・山根銀五郎さん(故人)は、城山の植生を「緑の缶詰」と形容しています。城山の植物の種類は約600種(平成15年に鹿児島大学が行った調査では549種)とされています。山根さんは、「城山と比べ圧倒的に広い霧島一帯でも約600種であり、城山がいかに植物種の密度が濃いかがわかる」と語っています。
城山は、南九州の植物分布の縮図とも言われ、人口50万人を超える大都市のど真ん中に自然林が残っているのは城山以外にはなく専門家の間で注目されてきました。
植物の中でも存在感があるのがクス。城山のクスを広く知らしめたのは、元ウィーン大学総長で、植物学の権威であるハンス・モーリッシュ博士です。東北大学教授として大正11年に来日し、全国を旅行するなか大正13年には鹿児島を訪れており、帰国後に書いた著書「日本の生物学」の中で、城山に群生するクスノキを「非常に素晴らしい」と紹介しています。この本がきっかけになり、海外の植物学者が来日の際、足を伸ばして城山を訪れるようになったとのことです。
またシロヤマシダ、シロヤマゼンマイなど数種類の植物は、日本での最初の発見地が城山であったことから、シロヤマを冠した名になっています。
ではなぜ、城山では多様な植生が見られるのでしょうか?
まず考えられるのは地形です。尾根や谷が複雑に入り組む地形が多様な生育環境になっており、内陸性・山地性の植物が多いですが、海岸から近く海風がよく当たる東側の崖面・法面には海洋性植物のトベラやシャリンバイ、ホソバワダンなども分布しています。
また、城山は、南北朝時代の14世紀半ばに上山氏が最初の山城を築いて以来、長らく山全体が城であり、鹿児島城が廃城になった明治初期まで人々の立ち入りが難しかったことにより、植生が守られたという見方もあります。
城山は昭和6年に国指定の史跡・天然記念物として、歴史・植生両面で評価されました。
〔参照〕:「城山」(讀賣新聞西部本社 平成5年)、「城山物語」(毎日新聞鹿児島支局編 昭和44年)、「鹿児島の自然だより」第42号 (平成21年 鹿児島県立博物館)、「ひと語録」(東北大学萩友会)

